2011/02/05

笹原和也のカメラワーク道2

転載元:Anima 塾長ブログ
会社を辞めるわけなので、
僕の持っているテクニックを少し残しておこうかとブログを書いてみます。
  
僕は台本は重要視しますが、絵コンテはあまり重要視しません。
なぜなら、カメラポジションの決め方など、そんなには重要じゃないと思っているからです。
現場の芝居やアニメーションに合せて、柔軟に対応すべきだと考えています。
ただ、適当でいいといいつつも、それなりにルールがあります。
そのルールを説明しましょう。
 
(1)カメラポジションは、意図がない限りなるべく動かさない。
理由は
動かすと、意味なくカメラの動きの難易度が上がってしまう。
実はスピード感が逆に出にくい。 
カメラが動いてしまうと、画面の中の被写体の動きが逆に殺されてしまうのです。
たとえば、自動車と同じスピードでカメラが移動したら、自動車のスピード感はまわりの背景が移動することによってしか、表現されませんよね。
でも、カメラが定点にいれば、自動車が動いていることは明白です。
 
動かす時はこんな時です。
・キャラクターを後ろから追いかける時
・急速にトラックアップしたり、急速にトラックバックする時。
・乗り物など、高速に移動する物体と移動する時。
・大胆なカメラワークをやりたい特別な時
・動かないとカメラワークに無理がある時。
 
(2)イマジナリーラインはなるべく越える。
イマジナリーラインとは、たとえば、会話するキャラクター同士を結んだラインのことで、
このラインを越えてカメラを置くと、キャラクターの向きが左右逆転することになり、
見ている人が混乱することになる、とされるラインのことです。
 
むかしから、イマジナリーラインを飛び越えることは大事なテクニックでしたが、
POV(視点撮影)が大流行の現代においては、
さらに、イマジナリーラインに意味がなくなったように思います。
(実は、僕は昔はガチガチに守る派でした。)
 
ただし、実写に比べて画面の情報量が乏しいアニメなどは、
やはりイマジナリーラインを大事にすべきかもしれません。
混乱を招くイマジナリーライン越えはよくありませんが、
混乱しない程度にはイマジナリーラインを飛び越えましょう。
キャラクターの動きが連続して繋がってみえれば、
混乱を与えず、イマジナリーラインを越えることができると思います。
 
(3)カメラポジションはなるべくアオリにする。
アオリとは、いわゆるカメラが上向きの状態のことを言います。
上向きなので、キャラクターを下から撮ります。
カメラワークの8割がアオリといっても過言ではありません。
アオリのほうが臨場感が高いと思っています。
 
(4)前後のカットでサイズに差がつくようにする。
風景を撮るロングショット、
キャラクターの全身を撮るフルショット、
キャラクターの胸から上を撮るバストショット
などいろいろありますが、これらの画面中のキャラクターサイズが
連続して似た大きさにならないように気をつけます。
 
いくつかのカットはこれぐらいの大きさにしたいという思いがあると思いますので、
その間をつなぐカットのサイズが同じサイズならないよう気をつければ
わりとプロっぽいカメラ割りになるはずです。
僕が頭を使うのは、実はその辺だったりします。
 
(5)
カメラポジションを決める要素を整理する。
カメラポジションは以下の三つの要素で決まります。

1)カメラの高さ、アオリなのか、水平なのか、俯瞰なのか
だいたいアオリにします。たまに説明したい時だけ、俯瞰を使います。簡単でしょw。
 
2)カメラのサイズ ロングショットなのか、フルショットなのか、バストアップなのか、それ以上か、その間など。
この決め方は(4)で述べましたね。
 
3)カメラのキャラクターに対する向き 正面、斜め45度、横、斜め後ろ、真後ろ、そして、その間など
感情を伝えたい時とかは正面付近のバストアップにして
あとは、場の状況に応じて、差別化されるように適当に選択するw。
 
(6)カット数について
なるべくカット数は少なくし、類似したカットを多くします。
なせなら、そのほうがコンポジットの作業量が減るからです。
 
モーションキャプチャー前提であれば、
なるべく1カットでも退屈しないような、お芝居に気をつけます。
どう気をつけるかというと、
動かざる負えない状況を作ることです。
理由もないのに動き回るのは、それはそれで不自然な芝居になりますから。
 
CAT SHIT ONE -THE ANIMATED SERIES-では、
会話シーンはなるべく周囲を警戒をしたり戦闘の準備をしたりする動作をしながら、
会話をしています。
そうやって、動きにバリエーションをつけることで、少ないカット数でも
おもしろく見れるようにしています。
 
本来、演劇などはカメラワークなどがなくても面白く観れるわけですから、
カメラをどこにおいて、どんな風に撮るかなんてことよりも、
芝居の内容に気をつけるべきです。

0 件のコメント:

コメントを投稿